不動産売却の手続きの中で、家庭裁判所の名が出てくることがあります。どんな時なのか具体例をお話します。
不動産を所有する親が認知症になった
父:すでに他界
母:夫亡き後、しばらく夫が残してくれた家で一人暮らししていたが、認知症が進んだため施設へ引越し。もう家へ戻ってくることはない。
子(長女):県外で結婚生活を送る
子(弟):県外で結婚生活を送る
ケース1の場合、実家が空き家になり今後も使用することがなく、また母の施設入居費用を捻出したいというお気持ちで、子2人が「不動産売却を依頼したい」と不動産屋に相談されることがあります。実家の所有者は母ですから子に売る権限はありません。このような場合、不動産所有者である母の認知症がどの程度のものなのか、売りたいという意思があるのか見極めるために司法書士さんへ本人確認の依頼をすることがあります。
※桜コンサルタントへ愛知県内の不動産売却ご相談頂いた時には、いつも弊社がお世話になっている司法書士さんをご紹介いたします。よく動いてくださる優しい方ですよ
司法書士による本人確認
自分で名前を書けるか、生年月日を言えるかなど、簡単に認知症の程度の見極めが出来る場合は子が行いますが、判断付きかねる場合は最終的には司法書士が直接ご本人(母)にお会いして確認します。もし、本人の意思確認が取れないと判断された場合は現状では家を売却することはできません。家を売却するには、母が住んでいる管轄区域の家庭裁判所に成年後見の申し立てを行う必要が出てきます。
後見は複雑な制度のため、この桜コラムでは私が実際に不動産仲介で知り得た内容のみ記しますね。詳細はご相談ください。
不動産処分のために成年後見の申し立てを行うことはけして珍しい事ではないということが分かります。
成年後見人のデメリット
認知症によって判断能力が欠けている母(不動産所有者)に不利益な不動産売却が起こらないように、家庭裁判所は成年後見人を選任します。成年後見人は本人の財産に関するすべての法律行為を本人に代わって行うことができます。つまり子が実家の不動産売却を進めることが可能になるわけです。ただし、良い事ばかりではありません。
- 子が成年後見人に選ばれる事案が少ない(家庭裁判所が親族による資産の使い込みを危惧している)
- 家庭裁判所が司法書士や弁護士を後見人に選んだ場合、月々数万円の報酬支払いが母が亡くなるまで発生する
- 毎月発生する司法書士や弁護士への報酬が負担だからという理由では、途中でやめられない
下記の円グラフは青が後見人になることが出来た親族の数、赤は家庭裁判所が後見人として選んだ第三者(弁護士や司法書士など)の数です。
後見人に選ばれるのは弁護士や司法書士(赤)が圧倒的に多いです。親族(青)が後見人として認められることの難しさが分かります。
家庭裁判所が下す「却下」という判断
家庭裁判所は全国で50箇所あり、成年後見の申し立てを行えるのは本人(母)が住んでいる管轄区域の家庭裁判所です。家庭裁判所は本人(母)の財産を守るため、子による申し立ての「却下」をすることがあります。
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■子による「母の後見人になりたい」という申し出⇒却下
また、家庭裁判所が後見人として弁護士を選んだ場合であっても、実家の売却価格は家庭裁判所の許可を得る必要があります。不動産屋が算定した査定価格に親族が納得したとしても、家庭裁判所の許可が下りない=許可が下りる価格にしないと販売できないこともあり得るわけです。
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■不動産販売価格の申し出⇒却下
家族間のことなのに思うように出来ないなんて!とぼやいてしまいそうです。
不動産と家庭裁判所の感想
親が高齢になるのはまだ先と思っていても、いつか必ずその時はやってきます。そして自分の名前が言えない、我が子の認識ができなくなる親御さんは一定数いらっしゃいます。最近私は子供に迷惑を掛けないように今の内から知識を増やそう、家族間でのお金の話(贈与・相続)をタブーにしないようにしようと心がけるようになりました。ただ、実際にはお金の話はとても繊細で、実の親子や兄弟姉妹間であってもなかなかどうして難しいのですけどね。。
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